2017 2.11 石 田 宇 則
Ⅰ 福島原発事故の深層
福島原発事故は、四基もの爆発だけでなく、ベント(放出)による放射能拡散、それにメルトダウン(炉心溶融)等による海洋汚染という未曾有の過酷事故である。チェルノブイリなみのlevel7とされるが、恐ろしく深刻な過酷事故である。
① 東京電力および国会調査委員会の報告によると、大気中に放出された各放射性物質の量は、希ガスが約50京ベクレル(500PBq)、ヨウ素131が約50京ベクレル、セシウム134が約1京ベクレル、セシウム137※ が約1京ベクレル。ヨウ素131とセシウム137の合計は放射性ヨウ素換算値で約90京ベクレル(900PBq) 、海へ垂れ流しの量は測定不能…とされる。 ※ 「京」は107
② これを「想定外」と軽々しく嘘をつくが、政府と事業者は十分わかっていた。原発は、大都市にではなく、人の住まない海辺リを選び、その県、市町村と住民を、《総括原価方式》による糸目なしの札束で買収、設置してきたのである。
③ 被曝五年後のチェルノブイリと同様、福島県内の子どもの甲状腺がんが、2016年9現在、184人と急増している。(上記の写真)
④ 放射能汚染の《原子力緊急事態宣言》は、いまだ、解除されない。〈次の表参照〉
⑤ 太平洋や湖沼のへ飛散した放射性物質は、プランクトンが吸い込み、それを小魚が食べ、次により大きな魚が食べ、放射性物質は次々と循環しながら濃縮されていく。《食物連鎖、生態濃縮》。
※2 NHKスペシャル「知られざる放射能汚染 ~海からの緊急報告~」 2015
福島第一原発より
〃 20㎞圏 メバル 2300㏃/㎏
アイナメ 1200㏃/㎏
30㎞ いわき市沿岸 300 ㏃/㎏
〃 80㎞ 茨城県北部 38 ㏃/㎏
高萩市 30 ㏃/㎏
〃 120㎞ ひたちなか沖 380 ㏃/㎏
〃 300㎞ 群馬県 赤城沼
地上 0.17㏃/㎏
プランクトン 296 ㏃ /㎏
食物連鎖 生体濃縮 魚 640 ㏃/㎏
泥 のセシウム 960 ㏃/㎏
⑥ 体内へ放射性物質が入ると、α線、β線が細胞や遺伝子を傷つける《体内被曝》。その結果、白血病やガン…その他様々な病気、奇形、突然異変を産み出す。その生態濃縮は、太平洋の深層で、深く静かに進行中である。
⑦ NHKスペシャル「被曝(ひばく)の森~原発事故 5年目の記録~」160306
⑧ このような非常事態に対する、国と電力会社の不作為に立ち向かい、住民の生命と暮らしを守るために、地方自治の憲法を活かして篠山市は、原子力災害対策検討委員会を設置。直近50㎞余の高浜原発の過酷事故を想定し、2012年より2016年12月まで18回の会合を重ねてきた。
⑨ 放射能被害をできるだけ小さく見せたい企業サイドに立つ文部科学省の放射能災害ハンドブックに対して、私たちは、過酷事故の大きさと深刻さをリアルに見つめ、生存権と人格権の切り口から、検討し編集に努めてきた。
以下、現状と実行可能な対策、および課題について報告し、本研究集会で更に検討を加えていただきたい。
Ⅱ 原発・核による細胞・遺伝子の破壊
① 広島、長崎における核分裂の破壊力は、日本帝国に壊滅的な打撃を与えた。アインシュタイン博士は、湯川秀樹博士に何度も頭を下げて詫びたそうだが、駐留米軍は、原子力〈核〉の非人道性が明るみになることを恐れ、ひたすら被害データを、克明に収集するだけで治療は一切せず、本国へ持ち帰った。一方、日本の大学と医師には治療だけ認めるが、「軍事機密漏洩防止法」をたてに、究明することを固く禁止する命令を出した。※(軍医 肥田瞬太郎氏証言)
② その結果、日米の軍事、政治、医療、科学分野の従属的力関係は、75年後の現在も依然として、至る所に存在し、犠牲や矛盾が噴き出している。
③ 福島事故《原子力緊急事態宣言》後の-基準緩和
|
|
基準 |
ガン死の発生率 |
平常時 |
一般の人々 |
1 mSv/y |
1/2500 |
放射線業務従事者 |
20 mSv/y |
1/125 |
|
事故後 |
福島事故 (労働者) |
250 mSv/1回 |
1/10 |
避難指示 (子どもを含む) |
20 mSv/y |
1/31 (子どもの場合) |
小出裕章さん講演会 2016.4.24 越谷中央市民会館
④ 福島第一原発では、廃炉作業がようやく始められているが、 猛烈な放射能と崩壊熱のため、炉心にはロボットさえ近寄れない。一方、増え続ける放射性廃物の捨て場所が見当たらない。汚染水対策の「凍土壁」にしても、漏れない保障はない土のおむつだ。相変わらず「トイレのないマンション」、「放射熱の泥沼に氷のおむつ」なのだ。
⑤ 利潤追求が優先するなか、地球の汚染と砂漠化は拡大し、種の絶滅に歯止めはない。《非常事態宣言》は、いつまで続くのだろうか。
⑥ おまけに、補償や廃炉費用を、「冷静に」次世代の全国民に押し付けて…。
Ⅲ 「 矛盾売り」やめて生命・生存権・人格権を
① 政府と電力会社・資本側は、原発を「under control」とか「ベースロード電源」と居直り、再稼働とさらに20年もの運転延長をもくろんでいる。高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉は決めたものの、見透しなき開発継続…飽くなき貪欲マフィアの影。心の片隅に、良心も神も仏も残っていないのだろうか。
② ここへ、ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期米大統領は22日、「世界が思慮分別をわきまえる」までは、米国は核能力を大幅に強化する必要があるという見解を示した。【AFP= 2016年12月23日】 この独善的なおごりと、日米同盟=安保条約とが連鎖し、隣国からの原発攻撃やテロを誘発すれば、地球破滅のハルマゲドンは、にわかに現実味を帯びてくる。
③ 先の国連における核兵器廃絶の決議に際して、米、中、ロなどの核保有国とともに、安倍政権は、また反対した。安倍氏は、真珠湾攻撃の反省と謝罪抜きの「慰霊」詣でなど、世界を奔走する文武両道の矛盾売り・セールスマンだが、人類と地球の未来、人格権、生存権に、展望や可能性が全くないとは思いたくない。
④ 原発NO!の世論は、五年間で過半数を超え始めた。地元はもとより、小泉元首相や河野太郎前大臣をはじめ、政府、経産省、(環境省にも)、自民党にさえ脱原発の意思表示を公然とする人も目につく。司法においても、福井地裁、大津地裁が、「人格権」を論拠に、運転差し止めの決定を下した。
⑤ また、鹿児島と新潟知事選挙では原発懐疑派が圧勝した。その他に滋賀県など脱原発を志向する自治体や世論は少数ではない。
Ⅳ 放射能汚染から子どもを守る === できることは何か ===
① 篠山市の原子力災害対策検討委員会は《2016年12月21日現在》
★ 医療安定ヨウ素剤の配布と備蓄開始、篠山市内児童の73.6 %が受け取っている。
★ 放射能災害の事前学習用ガイドブックを自主編集、発行へ向けて草稿を市議会へ提出した。
② 原発災害時に、安全な場所を決めるのは容易ではない。放射能の飛散方向は流動的だし、交通手段、停電等、意のままにはならないことは多い。幼児、児童生徒の避難先、肢体不自由な方々の避難先、移動手段等々、いずれにしても容易ではない。国にはもちろん、地方自治体にも、綿密な計画の立案は無理である。
③ どこへ、どう、だれと、いつ…避難するか。「自己責任」で飛んでいける人はほとんどない。”屋内待機“は成仏or自殺が可能。《阪神、福島震災で経験済み》
④ ドイツ、イタリア、スイス等では、原発の撤退を決めた。ベトナム、トルコでは頓挫。原発から足を洗い、自然環境、生存の権利、人格権を見直す運動は、世界的に広がっている。
⑤ 一方、全市民を対象とした学習の組織と計画は、容易ではない。しかし、篠山には、今まで「寄り合い」や「住民学習」等の風土があるし、前述①の73.6%には、大きな可能性が期待できる。
プロメテウスの火は、営々と積み重ねた科学の力で、何とか制御できる。しかし、福島原発事故後、6年経っても30年経っても、崩壊熱や放射能、核廃物は、収束することはない。《原子力緊急事態宣言》解除のめどもない。
主権者である住民…為政者、事業者、司法…は、目先だけの利益やエゴ、執着心を捨て、人格権、生存権、さらに生物の種の存続権をも視野に入れた、全地球的矛盾を止揚する、次元の高い決断が、今ほど急がれるときはない。
智と力を結び、矛盾を止揚・発展させる希望と喜びを !
Schedule
Incididunt
Lorem ipsum dolor sit amet, consectetu.
Consectetur
Ut suscipit imperdiet Nisl, non vitae blandit.
Simsalabim
Ut suscipit imperdiet nisl hest tempor.
Location
Name
Street
City/ZIP
Email: info@email.com
Telephone: XXXXX / XX XX XX